以下は、私が寄稿したレポートです。(ブログでこれまでに連載したものに加筆しました)
World Urban Parks世界大会の基調講演、プレゼンテーションから
World Urban Parks 初代理事 小口 健蔵
World Ueban Parksとなって初めての世界大会
大会は、第9回イベロアメリカ公園・庭園大会としても位置づけられ、@World Urban Parks Aスペイン公園・庭園協会(AEPJP)Bポンテ・デ・リマ市の三者が協力しての開催となりました。参加者はポルトガル以外から52名、総勢200名を超えました。会場は、Expolimaカンファレンスセンターというポン・テ・デリマ市所有の施設で、各種のトレードショーや乗馬の国際ジャンプ大会を開催できる場所の会議場でした。会議や公式ディナーは、会議場を使い、昼食や休憩スペースは、会議場の横に特設テントを立て開催されました。
大会の企画や運営には、World Urban Parksのヨーロッパ支部事務局長のクリスティ・ボイラン氏(アイルランド)、マヌエル・ソウザ氏(World Urban Parksポルトガル代表コミッショナー)、アレクサンドラ・エステベス氏(ポンテ・デリマ市長室長)の3名が中心となり、準備をしたそうです。
World Urban Parksとしては、この大会は新しい組織の国際的なお披露目の機会の一つとなりました。
※イベロ・アメリカとは、スペイン語で、イベリア半島のスペイン・ポルトガルと、かつてその植民地だった南北アメリカ諸国の総称です。
開会のあいさつをするポンテ・デ・リマのビトー・メンデス市長
World Urban Parksについてプレゼンするディグビー・ホワイト氏(World Urban Parks事務局長)
ここで、World Urban Parksについて、おさらいすると、1957年に発足したIFPRA(国際公園レクリエーション行政管理連合)を母体として2015年4月に誕生した世界の都市公園とオープンスペース、そしてレクリエーション部門を代表する新しい国際的な非営利の会員組織です。
そのミッションは、世界各地で都市公園やオープンスペース及びレクリエーション施設の整備や効果的な管理、利用の促進などを支援し、自然と結びついた健康な社会づくりに重要な役割を果たすことです。
大会は、関係者が一堂に集まり、コミュニケーションを深め、それぞれの国の課題を相互に知る貴重な機会となります。
大会前日にWorld Urban Parksの理事会を開催し会長、副会長などを互選
前日に、World Urban Parksの理事会が開催されました。残念ながら、私は仕事の都合で25日に現地に着くことができなかったのですが、事務局からポルトガルでの理事会に参加できない理事のためにスカイプを使い遠隔地からも参加できるようにしますとの連絡がありました。そこで、羽田の国際線待合室の一角でスカイプ会議に参加しました。
理事会の重要議決事項の一つに役員の選出があります。3月までIFPRA会長であったエマニュエル氏(スイス)が暫定会長です。複数の理事からの推薦があり会長にはギル・ペノロサ氏(カナダ)が満場一致で選出されました。副会長は、当初1名の予定でしたが、World Urban Parksは発足したばかりであり、組織拡充など手ごわい仕事が山積していることから2名選出することが決まり、エマニュエル氏(スイス)とニール・マッカーシー氏(オーストラリア)が選ばれました。
会長に選出されたギル・ペノロサ氏(カナダ)
会長になったギル氏が進めていること
World Urban Parksの一番の課題は、文字通り世界的組織になることです。前身の母体であるIFPRAがヨーロッパやアジア・太平洋地域の国々からの参加が中心で、南北アメリカからの参加は余りありませんでした。ギル氏は、南米コロンビアの首都ボゴタの公園緑地部長の経験があります。現在はカナダのトロントに住み8-80CitiesというNPOを主宰し、歩行者や自転車のための空間整備が都市には重要だと、ボゴタを世界的な歩行者天国・自転車都市にした実績をもとに各地の都市にこの考えを広めています。8-80Citiesの意味は、8歳から80歳まで、自立して安全に街中を歩き自転車に乗ることが出来る都市をつくることを目標にしていることからこの名前を付けたといいます。8歳というのは親が手を引かなくても自分で街を歩ける年齢ということです。
私は、ギル氏とは2014年8月にスウェーデンのマルメで開催された北欧公園会議で知り合いました。彼は基調講演者としてマルメに来ていました。マルメ市長主催の夕食会で隣り合わせになり、お互いどのような仕事をしてきたかなど会話が弾みました。「ケンゾー、明日の私の基調講演は是非聞いてくれ」といわれ、旅程の関係で私は翌日の基調講演会を予定していなかったのですが、急きょ参加することにしました。8-80Citiesの理念、ボゴタでの実績、これからの都市のあり方を一時間、ユーモアを込めエネルギッシュに語るギル氏に圧倒されました。
ギル氏が会長になることは、World Urban Parksを南北アメリカ始め世界各国に広めるのにふさわしい方だと思います。
ボゴタにおいて日曜・祝日の午前7時から午後2時まで、主要道路の片側車線を使って開催されているのがシクロビアと呼ばれている自転車・歩行者天国です。1974年に初めて実施されたこのシクロビアは年々、距離が延伸され、今や大都会ボゴタを網羅する総延長距離は121kmになります。利用者は100万人以上。また、自転車専用道路はシクロルータといい、総延長は200km以上あります。
こうした経験を踏まえたうえで、ギルは言います。「公園は民主主義のシンボルであり、平等を体現する場所」だと。ニューヨークのデブラシオ市長が貧困層のための公園予算を増やすと発表したというニュースが前にありましたが、ギル氏はコロンビアのボゴタで富む者だけでなく、貧困にあえぐ人々のためにこそ、公園を整備し、彼らの生活を変えようと考え、実績を上げました。
セントラルパークを作ったオルムステッドの考えにインスパイヤーされたといいます。公園の理想を考えた先達、そして同時代人の思い、それらが今の時代の新しい価値をつくりだすために大きな役割を果たしています。
ロンドンが東ロンドン地区の貧困層の問題を解決するために、ロンドングリッド計画を策定し、オリンピックを開き、いまは世界で最初の国立公園都市にロンドンをしようというのも「この民主主義と平等」という同じ文脈の上にあるのでしょう。
国際ガーデンフェスティバルが自慢のイベントに成長
ポンテ・デ・リマは、総人口が4万4千人の町です。町の中心部には2,800人が住み、ポルトガルで最も古い町として知られています。
毎年5月末から10月まで、リマ川の北側にあるポンテ・デ・リマ公園を会場に国際ガーデンフェスティバルを開催しており今年で11回を数えるといいます。
ポルトガルで唯一の国際ガーデンフェスティバルを開催していること、環境政策や町の自慢である風景の保全に力を入れていることも相まってポンテ・デ・リマがポルトガルの庭園首都であることを多くの市民が誇りに思っているという話でした。
会場のポンテ・デ・リマ公園の全景 横をリマ川が流れています。(ポンテ・デ・リマ市HPより)
さらに、国際的な広がりを持たせようとWorld Urban Parks世界大会を誘致して町おこし
市長の話によると、このガーデンフェスティバルをさらに発展させ、庭園首都の地位を確固とするために、World Urban Parks世界大会を誘致したというのです。それだけではなく、イベリア半島のスペインとポルトガルと、かつてその植民地であった南北アメリカ諸国をメンバーとするイベロアメリカ公園・庭園大会も同時開催に持ち込みました。こうして、ポンテ・デ・リマの世界的認知度を上げ、町の再生や環境保全、観光振興、福祉向上をさらに推し進めたいとの考えと聞きました。
World Urban Parks世界大会を町の発展に生かそうという発想は大変うれしいことです。
テープカットする環境大臣 (ポンテ・デ・リマ市HPより)
ポルトガル政府の支援も得て
国際ガーデンフェスティバルの開会式は、World Urban Parks世界大会の最終日に設定されており、ポルトガルの環境大臣がリスボンから来てオープニングのテープカットをしました。ポルトガル政府もWorld Urban Park世界大会を後援していただきました。ポンテ・デ・リマの市長なかなかのやり手です。
一日目のテーマはスマート・デザイン
基調講演1は、World Urban Parkの事務局長であるディグビー・ホワイト氏によるWorld Urban Parkのプレゼンです。World Urban Parkの起源、目的、および利点を概説しました。
基調講演2は、大会の共催者であるスペイン公園庭園協会のVivirlosparguesディレクターのホセ・アリエッタ氏とタティアナデラトー氏によるVivirlosparguesについてのプレゼンでした。
Vivirlosparguesは、スペイン公園庭園協会が、この数年力を入れて開発しているICTツールで、スペインの主要な公園をGISと連動させオンライン上で探検することが出来るようにしたオンライン・データベースです。
Vivir los pargues は 英語に訳せば To live Parks です。日本語だと「公園生活」でしょうか。
スペイン公園庭園協会ホームページより
(出典 スペイン公園庭園協会HP)
開発の目的は、アクセスすることにより、公園に関する様々な情報や知識が得られ、専門家や公園の利用者間の経験の交換を促進することです。
この3月にスペイン公園庭園協会の会長に選出されVivirlospargues開発の責任者のフランシスコ・ベルグア氏はいいます。
「Vivirlosparguesは、企業、技術者、政府、市民の参加を奨励する大きなショーケースです。これからますます大きな影響力をもつことになるでしょう。公園や庭園の現実と多様性を理解するのに役立ちます。」
スペイン公園庭園協会会長
(出典 スペイン公園庭園協会HP)
Vivirlosparguesについて詳しくは、Webサイトを見てください。
http://aepjp.es/index.php/red-de-parques-y-jardines
基調講演その3は、モロッコのマール・シカの大がかりなラグーン開発プロジェクトの進行状況についてのプレゼンでした。打ち捨てられゴミが溜まるラグーンの清掃から着手し、新たに海水の流路をつくり、海水流入を改善して生態系を回復するとともに、リゾート開発を進め、地域経済に貢献しているプロジェクトについて開発企業のマール・シカ・メッドの担当者がプレゼンしました。
基調講演のあとの主な発表テーマと発表者は次の通りです。
■「マヌエル・ストリート・パーク(ヨハネスブルグ)の改善と復旧戦略」 - エマニュエル・マッフォロゴ(南アフリカ)
■「メルボルンのホイットルシーにおける雨水活用プロジェクト」 - スティーブン・コンベン(オーストラリア)
■「先祖伝来の公園 」イザベル・クート(ポルトガル)
■「スマート公園:ケープタウンの公園の計画へのアプローチ」 ブラッドリー・バーガー(南アフリカ)
■「ベルゲン市の緑と青の基本計画策定と経営管理」シセル・リラム(ノルウェー)
■「東京都の防災公園計画とその運用管理」上杉俊和・細川卓己(日本)
プレゼンする細川卓巳氏
プレゼン後質問を受ける上杉俊和氏、細川卓巳氏
東京都公園協会の上杉・細川両氏による防災公園の話には、大きな反響がありました。ヨーロッパには地震が余りないので、防災公園という考えは普及していません。前に北欧公園会議のCIPPワークショップで私が東京における防災公園整備の話をしたところ、ドイツの大学で教えているという方から、自分も大学で災害時の公園の役割を教えているが、テキストでは第二次世界大戦の爆撃から生き延びるためにどう公園を使ったかという話をしているということでした。そこで、上杉・細川両氏に日本の防災公園の事例を系統立てて話してもらいました。参加者に防災公園の認識が深まったと思われます。
会議終了後、会場に近いリマ川の畔で記念植樹セレモニーがありました。
二日目 テーマはスマート・メンテナンス
基調講演1は「モザンビークのマプト市における都市の持続可能性と公共緑地適格性の再確認」をマプト市のントニオ・ロドリゲス公園緑地部長が講演しました。
基調講演2は、「スマートそして持続可能な公園や公共部門の設計」をテーマにドバイ、アラブ首長国連邦からピーター・スコット氏が、レポートしました。
ピーター・スコット氏は、オーストラリア出身で、ランドスケープや建築分野のデザインマネジメントやビジネス開発、マーケティング、財務計画、マスター計画、コンセプトづくり、ゴルフコースの造成などを中心に、オーストラリア、中国、ヨーロッパ、東南アジア、アフリカ、アフガニスタンや中東などで世界的に活躍しています。
ピータースコット氏
(写真出典:大会事務局HP)
彼は、CREATESを構成するアルファベットそれぞれを頭文字にする7つの言葉で、スマートパークづくりについて話をしました。自身の作品も含めイメージ豊かな画像を活用したプレゼンで、彼の考えていることがよく伝わってきました。また、世界のクライアントを納得させる術をもっている人だと思いました。
(図版出典 ピーター・スコット氏)
CREATESを構成するアルファベットそれぞれを頭文字にする7つの言葉の説明は次の通りです。
C - Connect (a sense of belonging, living for human beings, custodians of landscape, social spaces, safety, neighborhood)
R - Restore (culture, understanding the legacy, create for future grandchildren)
E – Enrich (create diversity, identity and character, quality)
A – Activate (get rid of dead spaces, live in a ‘park’, spaces people can use)
T – Transport (people need to get places, new ways of access, public transport, cycleways, walkability)
E – Economy (do the principles within the budget, local economy, global position, mixed use, business opportunities)
S – Sustain (health and well-being, ecology, infrastructure, leisure and recreation
Peter noted that ‘collaboration is the rule’ and there was advantage in involving all stakeholders.
ピーター・スコット氏が、プレゼンしたパワーポイントが大会のHPに掲載されています。下のアドレスです。
(パワーポイントの枚数が70枚以上あり、UPするのに時間がかかりますが見る価値は十分あります。)
http://congresso2015.cm-pontedelima.pt/wp-content/uploads/2015/06/Peter_Scott.pdf
3番目の基調講演は、ポルトガルのポルト大学のパウロ・マルケス氏「ワイルド・ガーデンズ:デザイン、多様性とメンテナンス」と題して、ローカルな種、花、草、および自然な素材を使用することの重要性を話しました。
コーヒーブレイクの間には、各国から参加した団体のメンバーがお互いに自己紹介します。日本からはIFPRAジャパン(現World Urban Parksジャパン)、公園財団、東京都公園協会の3団体。マレーシアのMyParks、中国公園協会、スペイン公園庭園協会、シンガポール公園レクリエーション研究所、スウェーデン公園協会、南アフリカの環境とレクリエーション管理研究所、アイルランドとポルトガルの景観研究所のメンバーが車座になりました。
写真 休憩時に輪になって自己紹介する参加者
(写真出典 大会事務局HP)
休憩に引き続いて、プレゼンテーションです。
主な発表は次の通り
■「管理計画 - 公共の緑の空間を認定するためのスマートツール」 - ディオゴサントス・マトス、ポルト大学(ポルトガル)
■「スウェーデン マルメ市の」ステン・ヨーランソン(スウェーデン)
■「公園の品質に焦点をあてたノルディック緑地賞」 - ゴラン・ニルソン(スウェーデン)
■「ブラジリアの公園整備と緑の質」 - 。マルセラ・ダモッタ(ブラジル)
■「都市林のスマート、安全で、健康的な管理」ペドロ・マルティネス(ポルトガル)
マルメ市の公園道路課のステン・ヨーランソン氏のRosengård地区の街路整備の発表に興味が惹かれました。氏は、スウェーデン公園管理者協会の会長でもあります。
昨年の夏、筆者はステン・ヨーランソン氏が陣頭指揮をしたマルメ市で開催した北欧公園会議に参加しました。北欧公園会議は、4年ごとに北欧諸国のいずれかの都市をホストとして開催しています。
マルメ市は、スウェーデン第2の都市で、隣国デンマークの首都コペンハーゲンとは橋でつながっており、近年産業構造改革を大胆に進め、移民が多く人口31万人を擁する急成長多文化都市です。コペンハーゲンからは車でも鉄道でも30分圏内にあり、経済圏を共有しています。コペンハーゲンと同様に自転車を優遇する都市づくりをしています。
マルメ地図
ステン・ヨーランソン氏の発表は、市の中心部に位置するRosengård地区の2004年から2014年までの街路整備の取り組みで、自転車や歩行者のための空間を積極的に整備するとともに、街路の結合点にミーティングプレイスを配置し、自動車から自転車や歩くことへの転換、緑化の推進などでCO2削減をし、街の賑わい創出や住民のコミュニケーション活性化を目的にしているとのレポートでした。街路を時代に合わせてを複合的視点でリニューアルしていることに納得するとともに感心しました。
三日目のテーマはスマート・プロモーション
講演するガルシア氏
基調講演1は、コロンビアのカトリックボリバル大学で景観デザインを教えるグロリア・ガルシア氏です。テーマは、「コロンビア・メデジン市の公園をめぐる5つの文脈」。
氏は、大学に勤める前は、景観デザインのコンサルタントとしての豊富な経験を持ち、IFLAの学生コンペ・コンクールの審査員を務めるなど国際的な活躍もしている方です。
今回の基調講演は、自身が働く大学があるメデジン市の公園緑地整備についての言及です。
メデジン市は、コロンビア第2の都市で人口250万人。コロンビアの中央部に位置し、周囲を丘で囲まれた谷筋に街が成立しています。20年前は世界で一番危険な都市と呼ばれていました。麻薬密売組織「メデジン・カルテル」を創設したエスコバルが「麻薬王」として世界中に悪名を轟かせた街です。
2013年に米紙ウォールストリート・ジャーナルとシティグループ実施した「今年の最も革新的な都市」コンテストで、メデジン市が、最終審査に残ったニューヨークやテルアビブを押え1位に輝きました。
近代的な交通網や公立図書館、スラム街と学校に設置したエスカレーターなどが社会統合に貢献していることが評価され、選ばれたといいます。
メデジン市は、エスコバルの死後、世界一危険な都市という汚名を返上しようと、様々な取り組みをして来ました。
コロンビアで唯一の地下鉄を整備し、貧困層の住む山腹のスラム街からエスカレーターやロープウェイで地下鉄駅へ結びます。スラム街に公共図書館を整備したほか、公園やスポーツ施設の充実に力を注ぎました。
新しく整備したスポーツ公園
写真出典 メデジン市HP
グロリア・ガルシア氏は、メデジンは、丘に囲まれ、中央を流れる川が、景観デザインにとって重要な地理的・歴史的文脈をもち、これを生かして街づくりをすることが大切だと力説していました。
現在、川の両岸は自動車道路で占有されていますが、地下鉄を伸ばし、公共交通機関の活用や自転車・歩行者空間の整備で車線を減らし道路を地下に潜らせることで、川岸には広い緑地を整備するプランを鳥瞰アニメーションで見せてくれました。
今回のWorld Urban Parks世界大会のメインテーマは、「SmartParks and Gardens」です。
このテーマにした理由を大会ディレクターの一人であるマヌエル・スーザ氏は次の三つだといいます。
@公園や庭園を新しく作ったり、メンテナンスする場合、より低コストにすることが求められていること
AICTを活用して管理を効率化したり、品質を保持すること、利用者を確保することがこれからますます必要になること
Bデザイン、メンテナンス、プロモートに新しいモデルを見つける必要があること
大会3日目の基調講演2は、米国インディアナ・大学エプリー研究所のスティーブ・ウォルター氏による「スマートパークのための革新的な技術」です。
スマートパークスにはまだ定義がありません。どう定義すべきかという話から始まりました。スマートシティ、スマートコミュニティ、スマートビルディングなどスマートを頭につけた用語は、建築や街づくりの分野ですでにあります。公園分野ではまだこれから議論しなければならないといいます。
今回の基調講演で、氏は、技術の進展が及ぼす公園の4つの領域を設定し、それぞれで、どのような取り組みがされるのかを提示しました。
技術の進展が影響を及ぼす公園の4つの領域
情報活用 植栽管理
利用促進 環境配慮
それぞれの領域でのスマートパークスの取り組み
■情報活用
•本部データと携帯機器をつなげ、許可業務、財産管理、作業順序の追跡、特別な設備の使用を管理する
•気候と気象データを活用し灌漑、水利用、水貯留および環境資源の適切な管理をする
•専門的なサービスを必要とするエリアでの場の活用
•公園内の植物や垣根の最適なライフサイクルのための条件評価
•樹木を含む植物種の管理と目録作成、外来種の管理
■植栽管理
•ロボット芝刈機
•無人芝刈機
•検査のセキュリティのためのUAV(無人航空機)
•灌漑の設計と水分センサー
•LED動作検出園路照明
•拡張現実感(AR) - バーチャルトレーニング
•草刈を必要としない自然景観づくり
•環境配慮した車や船舶
•移動における最短ルート設定
•リサイクル・コンポスト施設
•光害を減少させる設計
•適切な設計と建設により公園からの騒音を最小限に抑える
■利用促進
•WiFiあり、またはWiFiなし
•特別使用許可のためのアプリ
•使用頻度の高い領域を特定するためのアプリ
•健康処方のためのアプリ
•アプリは、リアルタイムで公園の持続可能性のKPIを提供します
•コミュニティイベント促進のためのアプリ
•健康づくりや活動プログラムへの参加を促すアプリ
•したいときにいつでも寄付ができるアプリ
•公園に関する意思決定への参加促進
•その場で解説や教育が可能なアプリ
■環境配慮
•風力・太陽光発電所
•アート風力発電所
•水貯留システムと計画
•災害と事業継続計画
•よく考えた隣接地のデザイン
•スマート芝、人工芝
•非飲用水の活用
•LEED建物(持続可能)
•改修や新設による環境負荷の低減
•KPIに基づいたオンライン環境監視
スティーブ・ウォルター氏の話は、米国国立公園局のグリーンパークスプラン(GPP)の取り組みと重なる部分がたくさんあります。
グリーンビルディング (Green Building)という考え方があります。日本語でいうと、「環境配慮型建物」「環境配慮型不動産」「環境に優しい建物」などと訳します。
一般的な建物と比べて、エネルギー、水、天然資源の使用量が少なく、廃棄物の発生量も少ない、そこに住む人々にとって、より健康的な建物をいいます。
公園にもこの考えを導入して取り組んでいるのが米国国立公園局です。
2012年のアースデーに、管内の国立公園で省エネ、省資源、廃棄物の減少、リサイクルの徹底などを目標管理するグリーンパークスプラン(GPP)を発表しました。
グリーンパークスという言葉は、まだ世界でもあまり使われていません。ネットで調べた限りでは日本でも使っているところはないようです。日本でも、グリーンパークスの考え方を広めたいものです。
「スマート」の考え方にも、公園の場合さまざまな観点からの検討が必要になります。「グリーンパークス」と同様に「スマートパークス」の検討が日本においても急務だと思います。
日本からのプレゼンテーション
この日は日本から二つのプレゼンをしました。一つは公園財団・公園管理運営研究所の高橋悦子氏・平松玲二氏がまとめた「国営公園における大規模花修景によるプロモーションについて―国営昭和記念公園のコスモスによる花修景を事例として―」。もう一つは、私が発表した「公園管理から公園経営へ 東京都庁の挑戦」です。
高橋悦子氏のプレゼンでは、コスモスを大空間に咲かせ、多くの人を魅了することや様々な工夫で公園への入場者を増やしていること、こうした手法を他の国営公園でも応用し、ひたち海浜公園のコキアやネモフィラの花畑が死ぬまで行きたい世界の絶景に選ばれていると紹介すると驚きと温かい笑いが会場に広がりました。
私のプレゼンでも、財政危機で公園の維持管理費が4割削減される中、公園経営という考え舵を切り替えた話は、予算削減は先進国共通の悩みでもあることから関心をもって聞いてもらえました。リーマンショックの後、東京お台場の潮風公園に高さ18メートルのガンダム像を立てて、アニメ産業の振興や地元経済活性化に貢献した話など、公園に立つガンダム像の画像を見て大変驚かれました。
プレゼンする高橋悦子氏
プレゼンする筆者
大会はこれから毎年開催されます。是非参加を!
世界の公園関係者は私たちと同じように悩んでいて答えを見出したいと考えています。先進国はどこも予算の削減や人口動態への対応に悩み、発展途上国は急増する都市人口への対応に悩んでいます。その答えを導きだすためのヒントがWorld Urban Parksの大会には凝縮されています。
今回日本からの3レポートとも大変興味を持たれ、日本の取組みは世界的に見てかなりの水準になることを確認できました。
大会は、フェイスツーフェイスで世界とネットワーク構築ができる機会でもあります。異文化に触れ、自らを振り返ることも大事な役割であるといえます。
日本と世界の公園の発展に向けて読者諸兄の大会への積極的参加を期待します。